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第47話 王都での一幕

last update Huling Na-update: 2025-04-25 09:24:39

 それからあちこちの店を巡って、俺は何冊かの魔法書を買った。

 おなじみのマジックアローと戦歌の魔法に加えて、新しく光の盾の魔法と沈黙の魔法に挑戦してみることにしたのだ。

 光の盾は防御力アップ。

 沈黙は相手の魔法を封じる。

 俺の読書スキルも少しは上がったからな。

 新しい魔法を覚えて戦術に幅を出したい。

 次は武具を見てみようと大通りを歩いていると、衛兵に呼び止められた。

「冒険者のユウだな?」

「えっ、あ、はい、そうですけど」

 カルマ下がりまくり犯罪者時代のトラウマで、俺は衛兵が苦手になっている。

 思わずテンパった返事をしてしまった。くそ、エリーゼの前だと言うのに情けない!

 衛兵はそんな俺の態度に構わず、つっけんどんに言った。

「お前を王城まで連行するよう、命令が出ている」

「えっ。俺、なにもしてませんけど」

「いいから来い」

 俺は問答無用で引き立てられた。エリーゼとクマ吾郎は心配そうな顔でついてきてくれた。

 以前ロープで乗り越えた王城の城壁の中に、今度はちゃんと門から入る。

 衛兵は問答無用の態度だったが、俺たちに危害を加えるつもりはないようだ。

 衛兵や騎士が行き交う中を歩いていく。

 やがてたどり着いたのは、見覚えのある塔である。

「ここは……」

 俺のつぶやきは無視されて、衛兵から騎士に引き渡された。

 塔の中に入って螺旋階段を登る。

 見覚えのある扉を開くと、彼がいた。

 騎士団長にして白騎士の称号を持つヴァリスだった。

「久方ぶりだな、ユウ」

 彼は穏やかな声で言う。

「は、はい。久しぶりです」

「急に呼び立ててすまなかった。きみに一つ、仕事を頼みたくてな」

 ヴァリスが目配せすると、部屋にいた騎士たちが出て行った。

 ついでにクマ吾郎とエリーゼも部屋から出される。人払いか。

「きみは森の民だな」

「…………」

 俺は思わず黙り

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